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鳳凰山



【概要】


T所在地 山梨県  
U訪問日時  平成25年【2013年】09月12,13日 ( 木,金曜日 )
V天候 両日とも晴れ後曇り,ほぼ無風 
W最高峰  観音ヶ岳  [ 2,840m ]
 X登下山コースと所要時間■ 初日
 夜叉神ノ森登山口[ 1,380m ](07:39)→≒1.7q[ 410m ]→(08:49)夜叉神峠 [1,790m ](09:06)→≒2.0q[ ,385m ]→(10:56)杖立峠[ 2,175m ](11:11))→≒2.6q[ ,335m ][休憩;16分]→(13:40)苺平[2,510m ](13:41)→≒1.3q[△ 75m ]→(14:19)南御室小屋[ 2,435m ]
■二日目
南御室小屋(04:40)→≒1.8q → (06:28)薬師ヶ岳分岐(07:18)→≒1.0q→(08:17)観音ケ岳(08:44)→≒1.3q → (09:51)アカヌケ沢の頭(10:11)→≒0.9q→(11:01)高嶺[ 2,778.8m ](11:02)→≒0.9q[△ 328.8m ]→(11:47)白鳳峠[2 ,450m](12:14) →≒2.0q [△1 ,000m ][休憩;12分]→ (14:26)広河原登山口[ 1,450m ]
 * 上記ルート図 
 * 表示距離についての注記
 Yその他 《1》登山口と山頂との標高差〜≒1,460m
 《2》日程〜 一泊二日
 《3》同行者〜 単独
【詳細】


先月笠新道を歩いた時に時折軽い膝の痛みを感じたが、帰宅後も何日かその痛みは続いた。いつもより長い。ハッと気がついたのは、新穂高温泉の駐車場からわさび平小屋キャンプ場までテント道具一式を荷物として持っていったのだが、フラットな短い距離にもかかわらず、膝がその荷重に耐えられなかった、のじゃないだろうか、と気がついた。そこまでもう膝はもろくなっているのか、と再確認したも思いだった。結局痛みがひくまでに3週間くらいかかってしまった。
 テント場で寝泊りしながらの山歩きは小生にとって山歩きでのひとつの夢だった。せめて一泊二日くらいはしたいために、リュック,テント,シュラフ、マット等などのすべての登山用具を、とにかく軽いことを最優先に買い揃えて準備してきた。でも、どうも無駄骨だった、みたいだ。この鳳凰もテント泊山行きができるのではないかと以前からずっと期待して訪問の順番をあとまわしにしてきたのだったが、笠行きでの膝の痛みでテント泊は諦めた。


小屋のテレビの夕方の翌日の天気予報では麓の韮崎市は、夜半から午後3時ごろまでは晴れでその後は曇りと雨だった。小屋主はここの天気と大体合っていると言っていた。その日の早朝高速道からは、山頂の方が一部見えた。ただ、その日は杖立峠から苺平までの間では今にも小雨になるのではないかと思われるくらいの濃霧になってしまっていたので、翌朝の快晴に賭けて早立ちすることにした。夜中にトイレに発ったときは、満天の星屑が素晴しく綺麗な夜空だった。麓の甲府市や韮崎市の街の灯りでダメだろうと思っていたのだが、全く影響を感じさせないほどの星の輝きだった。
 出発時間のときは東の空が少し赤みが差し始めていた。小屋の裏手のシラビソ林の薬師へ通じる登山道は真っ暗だった。不気味に静まりかえっていた。だんだんと夜も明け始め森の中も明るくなってきた。ここも苔むした林床に心安らぐ原生林だ。その林床に細い幹のシラビソが密生していた。ここら辺ではもう背丈が3,4メートルくらいしかない。森林限界が近いことを感じさせてくれていた。登山道脇にデカイ岩がいくつか見られるようになってきた。そしてさらに歩いていくと、林間の登山道の先がポッカリ穴が開いたように見えるその先に岩だけの木の見えない景色が目に入った。その場所に出てみると、森林とは全く別の風景だった。先月の笠が岳の杓子平に足を踏み入れた時と同じように劇的に世界が変わった。
 白砂と花崗岩とそしてわずかな数のダケカンバ、ハイマツの生えた、大きな坪庭という趣の、小高い丘だった。森の暗から白色の砂礫の明に、そして植物の世界から鉱物の世界へ。空は青く光満ち、浮かぶ雲も白く輝き、あたり一面を静寂が支配している。砂地を歩くときの、あの独特の靴音を聞きながら一歩一歩を味わうようにゆっくりと歩く。何歩か歩くと標識があり、「砂払岩」と書いてあった。登って来たシラビソ林の尾根の北側は雲海がびっしりと埋め尽くしていた。その雲海の上は朝日を浴びた靄がたなびいていた。その靄の中に巨大な三角形の、灰色したものが浮かんでいるように見えた。富士山だった。こういうシンボリックなだけの富士山も美しい、と感じた。さらに歩を進めると、登山道は幾つかの巨石を越えるようになっていた。その巨石の上からは、白砂の台地、まだ夏の色したダケカンバの小木とハイマツ、巨石で積み木のように重ねられてできてるような岩山、聳え立つ峰などを一望することができた。見惚れるほどに印象的な景観。その丘から分岐広場までの白砂とダケカンバ、ハイマツロードを、ゆっくり歩けるという特権を手にしたしみじみとした幸福感。分岐広場の砂礫だけのシンプルさの美しさ、薬師ヶ岳の大自然の不思議な造形美、白峰三山の勇壮な山並み、全てが輝いていた。アカヌケ沢の頭までの稜線歩きの素晴しさと爽快感で心と体が喜んでいる。観音ヶ岳の山頂からの大パノラマは圧巻だった。これまでの尾根歩きでずっとその姿をともにした壮大な白峰三山の右側に、仙丈ケ岳が、甲斐駒ケ岳が、そしてアカヌケ沢の大岩壁と地蔵ヶ岳のオベリスクが、雲海上には八ヶ岳と秩父連山の峰々が、聳え立ち、立ち並んでいる。荘厳なシンフォニーのようだ。頭から見るオベリスクの姿に目を見張りただただ感嘆するばかりだった。

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 もう9月も10日過ぎだからタカネビランジは見られないだろう、と思っていたが、御室小屋のご主人に一応聞いたのだが、まだ見られると聞いて、出会えるのを楽しみにしていた。薬師ヶ岳周辺は草花にはほとんど会えなかった。観音ケ岳に近い花崗岩だらけの岩場の岩の麓で始めて見つけた。一輪づつ、ひっそりと咲いていた。ひとり孤高を楽しみ、静かに微笑んでいる貴婦人といった感じだろうか。白に近いものから濃いピンク色までと花の色は一様ではなかった。だがこの一帯のは、時期を過ぎたからなのだろうか、それとも陽射しが強いせいなのか花弁が痛み色もくすんでいた。しかしその後アカヌケ沢の頭までの間で、遅咲きの、色、形とも鮮やかな何輪かにめぐり合うことができた。小生は、濃いピンク色のものに心惹かれた。ホウオウシヤジンが咲いていた。岩の割れ目に根を張った釣鐘草がぶら下がっていた。全てみずみずしい青紫色をしていた。この山だけの固有種でしかも絶滅危惧種でもあるという。確かに数は多くなかった。素敵な花だけに絶滅危惧種の指定の解かれる日が一刻も早く訪れることを願わずにはいられない。もうひとつ岩場の登山道のいたるところで彩りを添えてくれていたのがウラシマツツジだった。稜線の岩場の到る所で色鮮やかに真っ赤に紅葉していた。葉の葉脈がハッキリ見てとれるくらいの葉が大きいのもイイ。こんなに大量なのは始めて見た。他にはイワインチンやヒメコゴメグサ、ヤマハハコ、トウヤクリンドウなども咲いていた。

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 夜叉神峠ではススキの穂が開き始め、尾根道ではナナカマドの実が真っ赤に熟し、コケモモも赤い実を付け、ウラシマツツジは紅葉し、リンドウが咲き、そしてキノコも沢山生えていた。もうこの山には秋が来ていることを感じさせてくれた。
もうひとつ小生の大好きな、苔むした原生林のたたずまにどっぷりと浸かり、思う存分堪能できたのも幸せであった。
 ここも天気の良い日にもう一度訪ねたい、そう思う今回の鳳凰三山の旅だった。



【写真記録】
  

 ☆☆  天空庭園  ☆☆ 


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