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両神山



【概要】


T所在地 埼玉県
U訪問日時 平成20年【2008年】5月6日(火曜日、 祭日)
V天候 快晴無風
W標高 両神山  [ 1、723m ]
X登下山コースと所要時間 日向大谷(7:45)→3.8q→(9:40)清滝小屋(9:50)→≒1.5q(注1)一位ガタワ→ 両神神社→(11:25)山頂(12:30)→1.8q→(13:27)清滝小屋(13:35)→3.8q→(15:15)日向大谷
  (注1)清滝小屋前から両神神社へのル−トにふたつあり「一位ガタワ」とは右周りのル−トで旧白井差コースとの合流点の地名とのことであ。国土地理院の地図にはその右周りのル−トが載っていないのだが距離はやはり1.5q〜2qくらいだと思われる。なお小屋前に一位ガタワル−トの案内標識がないのでわかりずらかったが小屋と小屋の前の柵との間を左側に直進したら一位ガタワに行けた。
 * 上記ルート図
 * 表示距離についての注記
Yその他 《1》登山口と山頂との標高差〜≒1,053m
 《2》日程〜日帰り
 《3》同行者〜単独


【詳細】


 去年の11月と今年正月に茂来山に行った。雪をいただいた八ヶ岳や北アルプスを見たいためであった。このとき山頂から東南の方向のほど遠くはないと思われるところにひときわ特徴のある形の山があった 。背中がノコギリの刃みたいにぎざぎざな恐竜がうずくまっているような姿に似ていた。同行者が両神山という名の山と教えてくれた。 今年最初の雪のない山の山歩きはその両神山であった。
 雪山の雪景色はその単調さが心を惹きつけるような気がする。雪国住まいでない者には非日常の幻想の世界に遊ぶ心地がする。先月29日の至仏山はまだまだ冬の名残が強かったのでまだ一週間たらずしか経たない秩父山系の両神山もヤシオツツジが咲き始めているらしいとはいえまだ冬の気配が濃厚に残っているだろうと想像していた。
 でもそうではなかった。秩父の山は既に春たけなわだった。冬の名残が残っていたのは清滝小屋から山頂までの山域だけだった。
 新緑は陽光を浴びて光り輝き、谷川の水のせせらぎも耳に心地良く、草木の花々は絢爛あるいは可憐に咲き誇り、小鳥達はそれぞれの音色で思い思いのメロディ−を奏で、そう全山が生命の讃歌に包まれているようであった。
 草木の花の名はヤシオツツジ、山吹、二輪草くらいしか知らず、どのさえずりがなんという名の小鳥なのかは皆目解らない無骨者ではあっても春の息吹はなんとも心楽しいものであった。頂上までのほとんどが針葉樹、広葉樹の樹林帯の中の眺望のない登山道であったがこの息吹が疲れた体に活力を与えてくれた山歩きであった。 清滝小屋の手前に「弘法の井戸」という名の湧き水があり、その近辺の登山道脇の斜面に二輪草が群生しているさまはそれはそれは見事なものであった。路傍にこの風景がもしないと仮定するならこの道中の喜びは半減してしまったであろう。

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〈 陽光、新緑、二輪草 〉


 アカヤシオは期待通りの華やかさだった。登山口を出発するときに「民宿 両神山荘」のご主人がヤシオツツジを見るなら「一位ガタワ」の方を回ると良い、とアドバイスをしてくれた。そのアドバイス通りに「一位ガタワ」から両神神社までの間は新緑の中にピンクのアカヤシオツツジが陽光を浴びて点在していた。帰りには反対側ル−トで下山したがアカヤシオは2,3本しかみかけなかった。陽が良くあたり、土壌が岩質の一位ガタワ側の方をアカヤシオは好むせいなのだろう。
一位ガタワ経由ル−トは利用者がほとんどいないせいか荒廃していた。小屋からすぐ近くのキャンプ場までは道路を認めることができたがあとは落ち葉や枯れ枝で埋もれていた。だから木の枝につけられた赤い布切れが頼りだった。
 キャンプ場から一位ガタワの鞍部までは両側が絶壁の深い急傾斜の谷だったが昼なお薄暗く空気がひんやりとした深山渓谷の雰囲気が漂っていた。チョット薄気味悪い何かの鳴き声もあり神秘的ではあった。(ただ今にして残念なのはその声の主の方へ行こうとしたがやめてしまったことだ。なんかとんでもない獣かもしれない、とふと思いその場を立ち去ってしまった。悔いが残る。)
 鞍部からは陽光が燦燦と降り注ぐ明るい世界であった。陰から陽への変化を味わえる場所だ。ただ整備登山道に慣れ親しんできた者は何本もの倒木があり、それを乗り越えて先に進まねばならないので敬遠するかもしれない。でも注意深く行動すれば転倒も転落もしないに違いない。ただひとつ残念だったのは「のぞきの岩」を見逃してしまったことだ。

頂上からは周囲の秩父山系かの穏やかな山並みが見えた。富士山が雲隠れしてたのは残念ではあったが残雪をいただいた八ヶ岳を遠望できたのは嬉しかった。そして中空はどこまでも透き通り太陽は暖かく照らし山上は桃源郷であった。
そして頂の岩に咲き誇っていた一本のアカヤシオの美しいその姿は生涯忘れないだろうし、開花の時期にめぐり合えた幸運を感謝したい。


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〈 山頂のアカヤシオ 〉



【写真記録】


☆☆ 両神山の早春 ☆☆


【小鹿野町町長へのお願いの手紙】


拝啓
新緑の候、ますます御健勝のこととお喜び申し上げます。
またご多忙な公務ご苦労様でございます。
さて本日はお願いがありましてお手紙を差し上げさせていただきました。
 今月6日に両神山を訪れました。
登山道、案内標識などが小鹿野町の皆さんをはじめとした関係者の方々のご尽力により大変立派に整備されていましたことに訪問者の一人として感謝申し上げます。
 山頂に一本のアカヤシオツツジの木があります。
 たまたま昔からの山頂の移り変わりをご存知の地元の方から話を聞くことができました。その方が言われるには、昔は同じ場所に何本ものアカヤシオがあったそうです。そして他の何本かが枯れてしまったのは登山者がその根元を踏み荒らしたり、その周囲でストックを使ったりしたために根を傷めてしまったためであろう、と話していました。確かに両神山の中の最も過酷な自然条件の下でさえ生き抜いてきたわけですからその指摘は正鵠を得ているように思われます。ですからこのまま放置しておくとこの最後まで残ってくれたこの一本もいずれ近いうちに枯れ死してしまうのではないでしょうか。
  春が来るとこんなにも美しい花を咲かせる一木が山頂の最高点にある山は非常に珍しいしその意味では特別天然記念物クラスの価値があるのではないでしょうか。と同時に夏冬の酷暑厳寒や烈風にも敢然と逞しく生きるその姿は安易に自殺する現代の子供達を励ましているような気さえするのです。ですからこの木が生き続ける意志を持ち続ける限り、この木を子々孫々にまで残すための最大限の保存努力をする義務が現在の我々にはあるのではないでしょうか。例えば木の周囲に人が立ち入れないような柵などを設置するだけで守ってあげられるのではないでしょうか。
 どうか宜しくご配慮くださいますようお願い申し上げます。写真を同封させていただきましたのでご覧下さい。
 最後になってしまいましたが町長さんの益々のご健勝とご活躍を陰ながらお祈りさせていただきます。ご多忙中のなか貴重なお時間をいただきありがとうございました。
                                                                         敬具
                                                                    一登山者
                                                                                                                                                                                      平成20年5月吉日
        小鹿野町町長
              関口 和夫殿

( * この手紙を町長宛に送りました。たかが一本のツツジです。ですがただの一本でない気がします。保全対策が講じられることを念願してやみません。賛同される方は是非小鹿野町産業観光課に陳情してくださることをお願いいたします。)


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