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羊蹄山



【概要】


T所在地  北海道
U訪問日時  平成20年【2008年】7月11日(金曜日)
V天候 曇りそして雨 
W標高 羊蹄山     [1,898m]
 X登下山コースと所要時間  《 倶知安コース ≒11.3q 》
(1) 初日[ ≒4.7q ]
登山口(7:45)→(9:10)2合目(9:12)→ (10:35)6合目(10:37)→ (12:00)9合目分岐(12:05)→(12:26)羊蹄山避難小屋
(2) 二日目 〔 ≒6.6q 〕
羊蹄山避難小屋(4:35)→(5:00)真狩コース9合目(5:02)→(6:12)山頂(6:30)→(7:10)9合目(7:11)→(9:40)登山口 
 * 上記ルート図
 * 表示距離についての注記
 Yその他 《1》登山口と山頂との標高差〜≒1,548m
 《2》日程〜羊蹄山避難小屋泊[前夜泊;カーフェリー]
 《3》同行者〜単独


【詳細】


 前日の午前10時半に新潟港を出港したフェリーは今朝午前4時半に小樽港に着岸した。
 こうして北海道山旅の第一日目がスタートした。甲板からの小樽港近辺上空は重い雲が垂れ込めていた。こういう日もあるだろうとたかをくくっていたが最後までこういった曇天、霧雨まじりの濃霧、雨天にたたられるとはこのとき夢にも思わなかった。今にして思えば“蝦夷梅雨”の真っ只中に飛び込んでしまったようであった。でも今回この時期を選んだのは最盛期の高山植物を期待してのことだったのであまり落胆はしなかった。
 ガーミン社製のナビ360の誤用により目的地と反対方向に行ってしまい途中でUターンするというヘマをやり半月湖登山口に着いたのは7時15分頃だった。小樽郊外で車を運転中に吐き気がして本日の前途多難を思わせた。体調は良くないようであったし、途中で雨も降っていたところがあったので今日の羊蹄山登山は中止しようかなどとも思ったりなどしていたが登山口に着いてみると幸い雲ってはいたが雨は降っていなかった。迷いは消えた。
 登山口からエゾマツ、トドマツ、ダケカンバの古木、大木に目を奪われながら歩き始めた。いつしか霧雨まじりのガスが立ち込めたり,雨に変わったりと天候は回復の気配はなかった。ただ無風であつたのがせめてもの救いではあった。そんな天気だから周囲の眺望を楽しみながら、そして路傍の草花もないため花を愛でながらの気を紛らわしてのの山歩きとはゆかず急登の登山道をあえぎあえぎ全身雨と汗でびっしょりになりながらただひたすら頂上を目指して歩いた。こんなコンディションでありながら不思議なことだが幸福感が身体の芯からじわじわと湧き上がってくる。今回の山旅で他の山でも3、4度味わったあの感情は一体何なんだろうか。楽しみにしていた北海道の山を今歩いているという満足感なんだろうか。あるいは山の霊力のなせる業なのだろうか。腰も足の関節も痛くない。吐き気も消えた。
 事前調査で標高差が1、500メートル弱あるのがわかっていたから相当苦労するだろうと予想していたが、やはり登り甲斐(?)のある山だ。以前は標高差など気にしないで山へ行っていたが、たぶん標高差1、500メートル前後の山はこの羊蹄山が初めてなんじゃないだろうか。

 9合目の分岐にたどり着いた。
 ガレ場だった。ちょうど麓の方からお昼のサイレンの音が聞こえてきた。
 そしてこの場所でやっと草花が、雨にぬれてはいたが、可憐な姿で咲いているのを見られるようになった。後で羊蹄小屋の管理人さんや他の休憩者の方々に教えてもらったところなのだが花の名前は、チシマフウロ、ウコンウツギ、イワブクロ、ゴゼンタチバナ、エゾカンゾウ(小生にはいまだエゾキスゲとの区別がつかないのだが……)というのだそうだ。分岐から小屋までの道すがらにもそして小屋の周囲にも一杯咲いていた。お花畑に入ったという実感が湧いた 。

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〈チシマフウロ〉

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〈ウコンウツギ〉

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〈イワブクロ〉



 丁度昼飯を食べるのに小屋を借りようと小屋への道を選んだ。木造のいかにも山小屋らしい質素な構造の二階建てだった。入り口近くの方に囲炉裏がありそこにはストーブが置いてあったが昔の田舎屋の土間という感じで小さな窓がいくつかありいずれも二重窓だった。小屋の横には石炭が一杯野積みされていたから通年オープンしているのだろうか、とその時は思ったのだが後で羊蹄山の紹介パンフを見ると11月からは無人になるという。秋口の朝晩の冷え込みが想像できた。管理人さんは地元の旅館の若主人でもう一人の人と交代で小屋番をしてくれているとのことだった。ずぶ濡れの身には天国であった。4人の先客がいたがいずれも奈良県からの人達だった。衣服乾燥のために管理人さんがストーブをたいてくれていた。早速ジャケットと半袖のワイシャツをストーブの周りにかけた。ずぶ濡れのズボンは脱ぐわけにゆかず穿いたままで乾かすことにした。当初の予定では小屋に立ち寄ったり、これほどずぶ濡れになろうとは思いいもしなかったため替え衣を用意していなかった。
 昼飯を食べ管理人さん達といろいろな四方山話をしながら一時を過ごした。乾燥場所がストーブから離れているためかあるいは火力が弱いためかなかなか乾かない。二組の4人は三々五々山を降りていつた。そうこうしているうちに衣服も乾かず、そして休憩しすぎたせいか再度仕度し直すのが面倒になり、また先を急ぐ旅でもないのだからと泊まろうかと思い管理人さんに聞いてみると、飲み水と食料があれば宿泊でき、宿泊料が一晩800円で毛布一枚200円のレンタル料とのことだった。両方とも明日の下山口まで持ちそうだった。非常食を常時携帯していたことが幸いした。寝具は毛布を借りることにした。
 その後外は濃霧が立ち込めたり消えたりと不安定な天気が続いた。日没前には眼下には雲海が一面に立ち込め、言葉どおりの“雲上人”となった。夕暮れも小生の好きな茜色一色ではなかったが旅情を誘われた。 時々風の音が聞こえるくらいの静寂の世界であった。

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〈 中央部に頂が見えるのがニセコの山だとのこと 〉



 翌朝小窓から山頂方向を見ると晴れていた。
管理人さんはまだ休んでいたが心の中で御礼を言い急いで仕度をして小屋を後にした。真狩コースの9合目を経て火口壁のコルまではお花畑とハイマツの道だった。遠目には色が紅色で花柄が大型のせいかエゾスカシユリの群落がひときわ鮮やかであった。花の名前がわからないのがほとんどではあっても花を見ながらの歩行はやはり楽しい。思わず笑みがこぼれる。
 コルに立った時には火口底が一瞬見えたが天候は既に変わっていて一瞬のうちに濃霧が立ち込め火口底はすぐに見えなくなってしまった。火口底はろと状になっていて斜面も含め大きな岩もなくところどころが草地化していたような気がする。と同時に一時立ちすくんでしまうほどの猛烈な瞬間的な強風にあおられたりした。
 火口壁の大小さまざまな岩がゴロゴロした岩場のルートを左回りに歩を進めた。途中洞爺湖も見えたりした。ルートの足元ではイワブクロが沢山のグループで岩場の砂礫地にしっかり花を咲かせていた。イワギキョウの紫色も印象的であった。こんな劣悪(と思える)環境のなかで力強くそして逞しく命をはぐくむ植物には脱帽だ。ゴツゴツしたいくつかの岩山をペンキ印を頼りに乗り越えて山頂にたどり着いた。
簡単に朝食を済ませながら天気の回復を待ったがその気配が感じられず降りることにした。

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 一路下山を始めたが登山口に近づくに従い晴れ間が少しは出てきたようであった。倶知安町やニセコの温泉街と思われる家並みが望見できた。
と同時に登る時は見えなかったので気がつかなかったが森林のあちこちで立木の立ち枯れがあった。この山も森林の荒廃現象が始まっているのだろうか。
 小屋の管理人さんから羊蹄山は中山峠からが最も秀麗と聞いたのでそちらを回ることにしたが、残念ながらずっと上半分がガスで隠れていたり、峠付近では羊蹄山そのものさえどこにあるのかわからないほどの濃霧だった。
 次の山、十勝岳の麓、白金国設キャンプ場へと向かった。

【写真記録】


☆☆  羊蹄山の花々  ☆☆


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