百名山訪問記
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立山



【概要】


T所在地 富山県
U訪問日時  平成23年【2011年】09月24日 (土曜日)
V天候 快晴 
W最高峰標高 大汝山 [ 3,015m ]
 X登下山コースと所要時間 ★《初日》 室道ターミナル[ 2,441.2m ](08:36)→≒1.8q →(09:46)一ノ越[ 2,700m ](09:54)→≒0.6q→(11:05)雄山[ 3,003m ] (11:09)→≒0.5q→(11:51)大汝山[ 3,015m ](12:41) →≒0.4q→(13:01)富士ノ折立[ 2,999m ](13:02)→≒0.6q→(13:35)大入分岐(13:36)→≒2.0q→(15:02)雷鳥沢キャンプ場[ 2,277m ]
 ★《二日目》雷鳥沢キャンプ場(08:41)→≒1.9q→(09:34)室道ターミナル 
 * 上記ルート図 
 * 表示距離についての注記
 Yその他 《1》登山口と山頂との標高差〜≒573.8m
 《2》日程〜 一泊二日[前夜車中泊;扇沢駅駐車場]
 《3》同行者〜 単独


【詳細】
 

 

台風15号が通り過ぎて二日が過ぎていた。
 扇沢駅の夜空は満点の星で埋め尽くされていた。雲ひとつなかった。
 ただ、夏用シュラフでは寒すぎて夜中に何度か目覚めてしまった。予想外の冷え込みだった。もう一枚シュラフを持って来ないのを悔いた。
 だがこの冷え込みは翌日の上天気を予告していたのだった。
翌朝陽は燦然と輝いていた。
天空に雲ひとつなく、どこまでも蒼く透き通っていた。
一時微風が吹いただけであった。このそよ風がないときは稜線で肌寒いと感じることがないほどの気温だった。
扇沢駅を出発してから翌日また戻るまでこの天気は変わらなかった。何ともすごい幸運に恵まれたものだと思う。キャンプ場ですぐそばでテントを張っていた若い人が感に堪えたように、「天気が良すぎる!」と言ったのが耳に入った。この“すぎる”という表現に同感だった。
 駅を出てから戻るまでの山歩きの最中に目にするすべての山岳風景が雄大で気高くそして荘厳だった。今回は目にした風景の小生の拙い描写はやめよう。多言は無用だと思う。ただこの山が北アルプス北部の盟主であること、そして帰途室道バスターミナルの階段の踊り場に掛けてあった額縁に書かれてあった冒頭の言葉「立山は万葉集に神の国と敬われた霊山である。……………」ことを実感した。
 扇沢でもそうであったように、室道平でも忘れ難い満天の星空に恵まれた。後日ぜひこの山を再訪したいものだ。

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 ただひとつ残念だったのは、当初の目論見だった富士の折立から真砂岳、別山、そして剣沢キャンプ場までの縦走ができなかったことだった。キャンプ道具を持っても、標高差が560メートルの雄山をクリアできれば、後はほぼフラットだから何とかなる、はずであった。だが、この標高差でさえ約11,12キロの荷物は小生には負担が多き過ぎた。大汝山付近で左腰が痛くなりだした。また、すでにここまでの所要時間が予定を大幅に超えていた。無理は禁物、と弱気が囁いた。そして素直に従った。
 キャンプのための荷物の少量化、軽量化を可能にするための大きな課題が二つあった。リュックとテントをがさばらず、軽くすることだった。キャンプ時に使用していたドイター製の「フューチュラ 50+10 バリオ」(これはレインカバーが内蔵されている。)は2.15キログラムだ。主として夏キャンプ用にと、より容量が少なく、したがって重量の軽いリュックとしてオスプレイの「オルネ46(又は、ホーネット)46」という46リットル、700グラムというものを買った。これはレインカバーが付いていないからそれを含めると820グラムくらいになる。テントも現在の「エスパースデュオ」の代わりに、MSRの「カーボン リフレックス 1P」を買った。スタッフバック、ペグを含めないで、前者が1.7キロくらいなのに対して後者は1.04キロくらいだ。だから、夏山キャンプ対策としては両方で1.99キロくらい軽量化したことになる。今回「オルネ46」で、と思ったが、夏用キャンプに比べ寝具、衣類などの寒さ対策の荷物が増えてしまったため、「オルネ46」に荷物を収容しきれなかった。ために、「フューチュラ 50+10 バリオ」にせざるを得なかった。でも、560メートルくらいの標高差ならなんとかなるだろう、と楽観視した。確かに立山三山の稜線までは大丈夫だった。しかし富士の折立から剣沢キャンプ場までさらに担ぎ続けるだけのパワーはなかった。
 どんな感じなのかと思って「カーボン リフレックス 1P」を今回初めて使ってみた。キャノピーがオールメッシュであることは承知していたが、夕方になるとキャノピー内に予想以上の冷風が入ってきた風通しの良さには驚いた。レインフライの下端と地面が幅60センチ、高さにして約10センチ近く開いているためだった。昨夜同様こりゃ寒くて寝られないぞとビビった。最軽量のダブルウォールテントと銘うってあってそのとおりだと思うのだが、基本的にはレインフライ一枚のシングルテントとほぼ同じなので、結露も相当ひどいものになるだろうと覚悟した。オールウェザーブランケットを二つ折りにしてテントマットとし、その上にシュラフマットとしてモンベルのULコンフォートシステムパッドを敷いた。寝支度は、上はランニングシャツ、長袖シャツ、フリースの長袖シャツ、ネルの厚手のワイシャツ、その上にダウンのジャケットを重ね着し、下はパンツとモモシキの上にダウンパンツを履き、さらにその上に普通のズボンというものだった。掛け布団は下から上へ、ナンガの「スウェルバック280DX」という夏用シュラフ、ウォームアップライナー、シュラフカバーを掛け、そしてその上に保温性がより確保されるに違いないと信じて、ツェルトまで掛けた。それでも寒くて夜中に二三度目覚めたので、カイロを一つ使ってみた。朝ご飯用のお汁粉を作るのにトレーに水を入れたら、その水がザラメ雪状になったし、その後手作業するのに指がかじかんで息を吹きかけなければならなかったから、夜明け前後は零度近くになつていたものと推測される。そんな低温になったにもかかわらず、フライの下面にも、そしてツェルトの下面にも結露はなかった。この予想外の結果には驚いた。あれだけ外気が中に入ってくるのだからフライに結露ができなかったのは理解できるが、ツェルトの下面やシュラフカバーの内側に何故できなかったのか、その理由がわからない。考えられのは、外気との間に何重もの空気層を作ったのが、結果的に結露防止に役立ったのかもしれない。
 このテントについては耐水圧1000ミリ程度しかないため実際どの程度の雨まで雨漏りがしないのか、そしてフレームが少ないためどの程度の耐風力があるかが今回の使用ではテストできなかった。ただテント底面が縦横220センチ、70センチと外人用サイズのため身長165センチの小生には十分な広さだったのはがありがたかった。このテントはちょうど二週間くらい前にネットで個人輸入したもので、商品代、運送料、転送手数料、関税、消費税をすべてひっくるめて、31,316円だった。金額的には、販売店の24%値引きセールの恩恵と2010年モデルであること、そして折りからの超円高レートという事情がかさなってのお買い得価格と思えたので、サマーキャンプにだけでも使えれば、大きな戦力になるに違いないと信じて買った。来年夏は「カーボン リフレックス 1P」と「オルネ46」で勝負どころの標高差373メートルの高度にある剣御前小屋を越えて剣岳に挑戦しようと予定している。
 ただ、初めて使った今回の使用でこのテントが壊れやすいものであることがわかった。
 事前に読んでいた取り扱い説明書に、「正しい使い方をしないと」テントポールが簡単に破損する、との警告があった。「カーボン リフレックス 1P」は二本のテントポールでキャノピーとフライを支える仕組みになっている。素材はカーボンファイバーだ。「エスパースデュオ」のテントポールはアルミ製で460グラムなのに対して、わずか190グラムしかない。とにかく軽い。そして天井で十字にクロスして組み立てるようになっていて、長さは一本が3.3メートルくらいなのに対して、短い方のは7,80センチくらいの長さだ。この短いのを取り付け、あるいはとりはずすときは、ポールを押し込むようにして、テント生地を引っ張らないようにする、と説明書に書いてある。居宅で予行演習したが、ポールの長さに較べて、そのポールを差し込むためのテントのグロメッツ間の距離が短くすぎてなかなかうまくゆかなかった。そのことを思い出しながら朝、撤収時にその作業をしたら、そのポールの先端がポキリと折れてしまった。低温環境下で素材が柔軟性をなくしていたのかな、なんて思ったのだが、折れた箇所を何気なく見ると、その部分のポールに大きな穴が空けられていた。だからこの部分に強い圧力がかかるとすぐに折れる構造になっていたのだ。他の先端部分にはそんな穴はない。わざわざ折れ易いように穴を開けてあるとしか思えないのだ。この文章をご覧になつた方で「カーボン リフレックス 1P」を検討してる方はこの点をチェックポイントにした方が良いと思う。もし設営時に折れてしまったら、楽しみにしていたキャンプをあきらめて山小屋泊まりに甘んじなければならなくなるからだ。2011年モデルでもこの穴はそのまま残っているのだろうか。
小生にとっては超軽量であるということが最大の魅力なので他の弱点には目をつぶってこのテントを買ったので今回の故障があったからといって買ったことを後悔する気持ちはない。冷静に判断すれば、テントの一定の居住空間を確保しつつ軽量化を追及するとすれば素材の低量化と軽量化を図るしかないわけで、それは結局のところ、テントそのものの脆弱さにつながるのは当たり前なのだ。だから余命の長い若い人にはテントの選択基準に、軽量であるということは入れるべきでない、と思う。山地での暴風雨や寒さに身をさらすリスクの頻度が小生みたいな年寄りに較べてはるかに多いいわけだから。
 ただもう一つ付け加えておくとすれば、いろいろな工夫をこらせばこのテントの防水性、保温性、耐風性を向上させられることができ、その結果として秋の高山でのキャンプでも使えるに違いないと思う。問題はその工夫をこらした結果として、テント全体でどの程度重量アップになってしまうのか、という点だけだろう。
 以下がこのテントの各パーツの実測値だ。
1 キャノピー 440グラム
2 フライ 410グラム 
3 ペグ 6本 60グラム
4 予備ロープ 10グラム
5 ポール毀損時の処置用アルミパイプ一本 10グラム
6 ペグ用スタッフバッグ 10グラム
7 ポール用スタッフバッグ 20グラム
8 テント一式が入るスタッフバッグ 40グラム(約12センチ×約12センチ×約50センチ)

立山の行き帰りに黒四ダム見物もできた。これまで黒四ダムについて興味はなかった。しかし今回現地で、ダムとその為の隧道や交通手段などを目の当たりにして、この峻険な高地や渓谷での工事の凄さ、壮大さとその工事のためではあっても自然環境をできるだけ破壊しないで子々孫々に伝えようという先輩達の熱い思いもいたるところに感じることができて感銘を受けた。我が国戦後文明の輝かしい金字塔の一つに違いない、とも思った。


《 09.30追記 》
 ………破損ポールのその後について………
 まずポールの写真について
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 部品が届いたので修理し、デジカメに記録してみた。最下段が折れた、というか、折った部品で“トップ・チップ”という名称とのこと。真ん中が破損部品を新品と交換し、その新品の一方にパイプ内を通っているショックコードを結わえた状態で、その新品の下半分くらいをパイプ内に収めると、最上段の写真のような状態になって、その先端部分がテントのグロメットに差し込まれることになる。
 本文で「折れた箇所を何気なく見ると、その部分のポールに大きな穴が空けられていた。だからこの部分に強い圧力がかかるとすぐに折れる構造になっていたのだ。他の先端部分にはそんな穴はない。わざわざ折れ易いように穴を開けてあるとしか思えないのだ。」と書いたが、この「大きな穴」がトップ・チップのショックコードを通す穴のことだ。
 MSRの日本代理店破損部品を送付し、ポールの構造について説明を受けて、何故折れたのか、あるいは折ったのか、その原因がわかった。写真でもわかるとおりトップ・チップはその先端部から1センチくらいのところから少し細くなっている。クビレがある。ポールをテントのグロメットからはずすとき、このクビレがグロメットの金具にひっかかって、トップ・チップを穴の部分までパイプから引き出すことになってしまい、ポールの両端にかかる強い張力のためにその圧力に弱い部分折れた、のだと思う。その状態をみて「他の先端部分にはそんな穴はない。わざわざ折れ易いように穴を開けてあるとしか思えないのだ。」と誤解してしまった。
トップ・チップの途中から細くする必要などないとおもうのだが、製品の欠陥とまではいえない、と思うので補足訂正説明をした。取り扱いに細心の注意をしないと、小生と同じ失敗をしかねないので、ご注意を。ただ、小生の場合は、個人輸入のため、部品代は有償なのだが、国内販売店で買った後での破損であれば、無償修理とのことなので、念のため。       

【写真記録】


 ☆☆ “神の国” ☆☆ 


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